街を歩いていると、住宅街のなかに建つタワーマンションを見かけることはありませんか?
これらの建物は、ほとんどの場合、「総合設計制度」というものを利用して建てられています。
総合設計制度とは、建築物の敷地に「公開空地」という、一般公衆が自由に出入り出来る空地を設け、特定行政庁の許可を得た場合に、容積率等の緩和を受けられるという制度です。
「皆が利用できる空地を提供してくれれば、大きな建物を建てても良いですよ」といったようなイメージです。
正式名称は、「敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例」(建築基準法第59条の2)といいます。
この建築基準法の内容だけですと、詳細がよくわからないため、国(国土交通省)が運用方法・技術的助言を通達し、それをベースに、各自治体がそれぞれ独自のルール(許可要綱)を定めています。
東京都の場合、延床面積が10,000㎡超の場合は、東京都の許可要綱が適用されますが、10,000㎡以下の場合は、各自治体(港区や渋谷区など)の許可要綱が適用されることとなります。
ここでは簡単に東京都の許可要綱の内容を説明させていただきます。
※延床面積10,000㎡以下の場合は、各自治体の許可要綱が適用されますので、下記内容とは異なりますので、ご注意ください。
東京都の許可要綱にもとづく総合設計制度は、以下の5種類のタイプに類別されます。
これら5つに共通する「基本要件」と、それぞれ個別の「種類別要件」があり、「基本要件」は以下のようなもの(一部・例外有り)が挙げられます。
つづいて、「種類別要件」を見てまいります。建替えをうながすような総合設計制度である、「共同住宅建替誘導型」の要件等は以下の通りです。
それ以外の地域・・・500㎡以上
これらの条件に合致したマンションは、総合設計制度を利用し、建替えを行うことが出来る可能性があります。
それでは、総合設計制度を利用するメリットはどのようなものがありますでしょうか?
総合設計制度のメリットは、以下の3つが挙げられます。
総合設計制度を利用するメリットとして一番に挙げられるのが、容積率の緩和です。
具体的な計算については、非常に複雑なため、解説いたしませんが、公開空地が広かったり、緑地が多かったりと、公益性・公共性が高ければ高いほど、容積率緩和を受けられるような仕組みになっています。
たとえば、「公開空地の質係数」というものがあり、公開空地の質が高ければ高いほど、係数(評点のようなもの)が上がります。
割増容積率については、そのような係数を掛け合わせて算出されるため、公益性・公共性の高い公開空地等を作れば、おのずと容積率もい高くなるというわけです。
その割増容積率には、上限値があり、「共同住宅建替誘導型」の場合は、以下のようになります。
天空率を適用することが出来ない計画敷地に限り、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限の緩和を受けることが出来ます。
低層住居専用地域の絶対高さ制限(10mまたは12m)については、20mを限度に緩和を受けることが出来ます。
さまざまな緩和を受けることが出来る総合設計制度ですが、緩和を受けられないものもあります。
それは、「日影規制」の制限です。
計画敷地や、北側の日影を落とす地域に日影規制がある場合には、それにより建物形状が制限されてしまうため、注意が必要です。
以上、大まかではありますが、総合設計制度について説明をさせていただきました。
この制度を利用できると、非常に大きな建物に建替えることが出来ますので、検討している物件が上記条件に当てはまらないかどうか、都度確認してみると良いと思います。