投資コラム/建替えの手法を知る
建替えに必要なあたま数と議決権
建替えに必要なあたま数と議決権

マンションにはたくさんの区分所有者がいるため、一人が建替えをしたいと思っても、当然ながら、勝手に建替えを進めることは出来ません。

では、何人揃えば、もしくはマンション全体の何パーセントが合意すれば、「建替え」という方向に進むことが出来るのでしょうか。

民法による建替え

民法上では、共有財産についての処分や変更は、共有者全員の合意が必要となります。

100戸のマンションの場合、99戸が賛成していても、1戸が反対していれば、建替えは出来ないことになります。

戦後の長屋のような建物であれば共有者も限られていますので、民法の全員合意でも何とかなりそうですが、数多くの世帯が住んでいるマンションでは、なかなか全員合意は難しいです。

区分所有法による建替え

そこで、昭和37年に生まれた法律が「区分所有法」です。

建替えだけでなく、増えてきていたマンションで生じる様々な問題を解決する為に、民法の特別法(民法より優先される法律)として誕生した法律です。

その区分所有法では、マンションを建替える場合、「5分の4」の賛成が必要と定められました。

つまり、100人のマンションでは、80人賛成すれば良いのです。

厳しいパーセンテージではありますが、民法よりもずいぶんとハードルが下がることとなりました。

おおまかに「5分の4の賛成」と書きましたが、実際には、「区分所有者(あたま数)の5分の4」かつ「議決権の5分の4」が必要です。

議決権とは

「議決権」とは何かというと、各区分所有者が持つ影響力みたいなもので、規約で特段の定めがない限り、「各区分所有者の専有部分の割合(専有面積÷全体の専有面積)」となります。

つまり、床面積を多く持つ人は、それだけ多くの影響力を持てるということです。

たとえば、5戸のマンションで、それぞれ下記のような面積だとします。

A:50㎡
B:50㎡
C:100㎡
D:150㎡
E:150㎡
(A~Eの合計:500㎡)

この場合、議決権は、以下の通りとなります。

A:50㎡÷500㎡=10%
B:50㎡÷500㎡=10%
C:100㎡÷500㎡=20%
D:150㎡÷500㎡=30%
E:150㎡÷500㎡=30%

建替えをする為には、「5分の4=80%」の議決権が必要となります。

たとえば、Aだけが反対した場合は、「100%-10%=90%」でクリアですが、DかEが反対すると「100%-30%=70%」となり、80%を下回ってしまいます。

そのため、5人中4人が賛成していても、議決権を多くもつ1人が反対すると建替えが出来ないこととなってしまいます。

実際、あるマンションでは、90%超の区分所有者が賛成したにもかかわらず、専有面積を広く持ち、議決権の20%超を持つ区分所有者が反対したことで、建替え決議は否決となってしまいました。

投資対象となるマンションを探す際は、議決権を多くもつ区分所有者がいないかどうかもチェックする必要があります。

特に、1階に広い区分所有店舗がある場合は、要注意です。その店舗だけで、議決権を多く占めてしまうおそれがあるからです。

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