マンション建替法を用いた建替えの場合、旧マンションで持っていた権利は、新マンションの権利に変換(権利変換)されることとなります。
その権利変換は、基本的には”等価”で行われます。
旧マンションの価値が100だとすると、新マンションで得られる権利も100ということです。
※ここでいう等価は、実勢相場価格での等価という意味とは異なります。
権利変換をすることで、権利の価値が増減しないように、旧マンションの評価と、新マンションの評価を明確にしておく必要があります。
旧マンションの評価額を「従前評価額」、新マンションの評価額を「従後評価額」と呼びます。
「従後評価額」については、分譲価格より2~3割安い、新マンションの「原価」のことを表しており、「権利者価格」とも呼ばれます。
この「従後評価額」「権利者価格」の単価は、どちらも新マンションの「原価」の単価ですので、ディべロッパーが取得する際の「保留床買取価格」の単価とも同じです。
従前評価額の算出方法は2段階で行われます。
まず、旧マンション全体の評価額を算出し、それを各住戸に割り振るようにして計算します。
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従前評価額と従後評価額の合計は、「等価」ですので、「従前評価額の合計を算出すること」は、「従後評価額の合計を算出すること」と同じことになります。
「従前評価額の合計」=「従後評価額の合計」
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従後評価額の合計については、「権利者が得る床面積×原価の単価」です。
「従後評価額の合計」=「権利者が得る床面積×原価の単価」」
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この「権利者が得る床面積」というのは、「新マンション合計面積」から「事業費を捻出するための床面積(保留床面積)」を引いたものです。
「権利者が得る床面積×原価の単価」
=「(新マンション合計面積-保留床面積)×原価の単価」
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数学のおさらいで「(A-B)×C=AC-BC」ですので、上記(3)の式は以下の分解できます。
「権利者が得る床面積×原価の単価」
=「(新マンション合計面積×原価の単価)-(保留床面積×原価の単価)」
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「新マンション合計面積×原価の単価」は、「新マンション全体の価格」であり、「保留床面積×原価の単価」は、「事業費」の価格です。
「(新マンション合計面積×原価の単価)-(保留床面積×原価の単価)」
=「新マンション全体の価格-事業費」
上記(1)~(5)をまとめると、以下のような式になります。
つまり、「従前評価額の合計」は、「新マンション全体の価格」から、「事業費」を引いた金額ともいえます。
「従前評価額の合計」を旧マンションの各住戸に割り振る必要があります。
旧マンションの各住戸の評価額がはっきりしていないと、新マンションにおいて、どのくらいの面積を取得できるかがわからないからです。
各住戸への割り振り方は特に決まったルールはなく、それぞれの組合ごとに決定することができますが、大きくわけて2通りの方法があります。
→土地は持分に応じて按分
建物は床面積割合+効用比(※)で按分
→それぞれを合計する
この方法は、単純に従前評価額の合計を土地の持分比率で按分する方法です。
土地の持分は登記情報で確認することができます。
建替えられるマンションは、築年数を相当年経過しており、建物の価値はほぼ無く、土地の価値しか残っていないという考え方に基づいています。
また建替える場合、既存の建物は取り壊されるので、土地しか残らないという観点もあります。
土地だけでなく、建物の価値を考慮する評価方法です。
新マンションの価格においても効用比は採用されているため、旧マンションの評価においても効用比を採用すべきという考え方です。
分譲時価格で比較しても、通常、階数や部屋位置により坪単価に差があるため、そのような差をしっかり反映させたいというものです。
土地と建物の分け方は、様々ありますが、まず土地の評価額を算出し、残った価格が建物評価額になるというような考え方が一般的です。
土地の評価額の算出方法も様々ですが、不動産鑑定評価等で算出します。そしてAと同じように土地持分に応じて按分します。
建物評価額については、効用比に従って按分します。
その按分された土地評価額と建物評価額を合計することで、各住戸の従前評価額が求められます。
以上、少しややこしい内容になってしまいましたが、従前評価額の算出方法を解説させて頂きました。
覚える必要は無いですが、大まかにご理解頂ければと思います。